かわいいむすこはずるい。

2016年春に息子が生まれました。

自己肯定感強め男児

自分のネガティブな性格の元凶は幼少期にあり!もっと誉めて育てて欲しかった!という思いから、息子には母のように歪んでもらいたくないという親心のもと、昨今流行りの「自己肯定感」をスローガンに息子を育ててきた結果、あまりにポジティブに仕上がった息子のメンタリティに、母、戸惑う。

道行く人には必ず「こちわ!」と元気よく声をかけ、散歩中の犬には「わんわー!」と突進し、ひなたぼっこをしている猫には「にゃにゃん!おいで!」と歓喜の声をあげ、公園では初対面の小学生集団に混じってボールを追いかけすぐさまその場の主役となり、3秒でも目を離そうものなら美人のお姉さんのお膝に座りご満悦でクッキーを食べている。

どうやら保育園でもよろしくやっているらしい。お迎えの際、母と再会の抱擁を交わしていると、ぞう組のお姉さんが詰め寄ってきた。「さっきまで私と楽しく遊んでたのに、ママがきたらママのところへ行くの?ねぇ、私のことはもういいの?」

かれこれ30年もずっと私にネバネバと絡みついている「私なんかが」「ここにいるだけで」「迷惑かもしれないし」「仲良くしたいけど」「どうしたらよいかさっぱりわからない」
の全てに、息子はいともたやすく答えを出してしまった。

「特に深く考えず」「思いのままに」「楽しめばよい」

正直なところ、息子の目鼻立ちなど造形はごく日本人的で、ハーフ系のオムツモデルのようなぱっちりした二重まぶたや、スッと通った鼻筋などは持ち合わせてはいない。ずんぐりむっくりした体型で、ついでに言うと冬場はいつも鼻水を垂らしている。

しかしそんなハナタレコゾウの息子はいつも誰からでも「可愛い可愛い」とチヤホヤされるのだから、顔の些細な凸凹に、醜美や優劣を見いだすことには大した意味は無かったのだと思い知らされた。

愛嬌。これがすべて。根拠無き自信。これもだいじ。

「最近ほういれい線が気になって」「寝不足で肌荒れだし」「髪の毛ぼさぼさだから」と人目をはばかるように帽子を目深にかぶり、猫背で歩きながら「声をかけないでほしいオーラ」を出し「私なんて」と猫背で歩く母などこれっぽっちも意に介さず、ベビーカーから選挙カーのごとく身を乗り出し「こちわ!」「こちわ!」と誰彼かまわず愛想を振りまく息子。一瞬驚いて振り向き、息子を認めたとたんに満面の笑みになる散歩中の人々。

こうして成功体験を重ねていった結果、息子は「ボクは最高に可愛い」という認識に至ったようだ。ことあるごとに自分で自分の頭をなでなでしながら「あっぴ(息子の一人称)かぁいい」と言って一人遊びをしている。羨ましいので母も便乗して「ママは?ママもかぁいい?」と聞いてみると「ママかぁいい」と私の頭もなでなでしてくれるのだった。

息子に向けられる周囲からの愛と、あふれんばかりの自己肯定感のご相伴にあずかり、こんな形で私のいびつな心に栄養を与えてもらえるとは、人生思いもよらない展開もあるのだなぁと、そんなアレで、なんとかがんばっていきましょう。