お気に入りのおもちゃを手ばなさい息子に保育園のお兄ちゃんが声をかけてくれた
息子を保育園に迎えに行った時のこと。
私を見つけると、弾ける笑顔でさっきまで遊んでいたタイヤ付きのブロックを手に持ったまま駆け寄ってきて「ママ、こえ!」(このブロックカッコいいでしょう。僕のお気に入りやねん)と自慢気に見せてきた。
そっかー、それ好きなんだねーと答えると「ママ!ママ!あっちーの!あっち!」と訴え、お兄さんたち3人組がブロックで作った大作のロボットを指差した。
指差したロボットをよく見ると、息子が手に持っているのと同じタイヤ付きパーツが含まれていて(もしやアレも僕のブロックだと言いたいのか?)と母は察するも
「そうだねーお兄さんのロボット大きいねー…さあ!バッグもって先生にご挨拶しよ!おもちゃ置いてお家帰ろうかー!(さて手に持ってるお気に入りブロックをどうやって手離せるよう仕向けよう…)」
と華麗にスルーしたところ息子、お兄さんたちのロボットへ向かいダッシュ&目にも留まらぬ速さでロボットを破壊。
欲しかったパーツをもぎ取り「うふふ。手に入れたぜ」という顔をした。
お前…なんてことを…
慌てて駆け寄って、お兄さんたちに母から「ごめんなさい」をして、息子にも「ごめんなさい」を促した。しかし頑としてごめんなさいをせず、険しい顔で手に入れたタイヤを抱きしめ、フルフルと横に顔を振る息子。そしてお気に入り2つを両手に持ったまま帰宅しようと「いこか!」と言った。
おい…少し強めに叱ろうか悩んだ一瞬先に、ロボットを壊されたお兄ちゃん3人組のうちの1人が
「それ欲しかったんだね?」(傾聴)
「カッコいいもんね」(共感)
「でもそれ、保育園のおもちゃなの。みんなのだよ。持って帰れないんだよ」(なぜダメなのか/事実の提示)
しかし息子、相変わらず険しい顔で首を横にフルフル。
「ダメだよ。保育園のおもちゃだから」
気長に優しく諭してくれるお兄ちゃん。
「あ、そうだ!次まで、僕が取っておいてあげる!」(提案)
ここで息子、顔色が変わった。
「ね?お兄ちゃんが、取っておいてあげるから!また今度遊ぼう?」(息子の顔色が変わったのを見逃さず、響いた提案の再確認)
息子、しばらく悩んだ後、お兄ちゃんにお気に入りのおもちゃを「どうじょ」と手渡すことができた。
そしてお兄ちゃん、私とアイコンタクト。
おもちゃを手放して帰ることを納得させてくれたお礼と、ロボットを壊してしまったことの謝罪がそのアイコンタクトで伝わったようだった。
しゅごい…お兄ちゃん…しゅごいよ…と言ってもあの子保育園児…5歳だか6歳だよ…尊い…徳が高い…彼は人生3周目とかなんじゃないかな…
それにしても
・まだ小さい子のすることだから、と、せっかく作ったロボットを壊された怒りや悲しみを堪える
・欲しかったんだね、という気持ちに共感する
・気長に付き合う
・納得できる提案をする
保育園児の人間力すごい。「僕が取っておいてあげるから!」は私(30代女性)も思いつけなかった。
なるほど息子からすれば「みんなが使うけど、帰り際の時間帯で園児が減ったから、やっと自分のものにできた」お気に入りのおもちゃだったのだ。お兄ちゃんが「取っておいてくれる」のだったら、また今度これで遊ぶことができる、と納得できたのだろう。
さて数年後、息子があのお兄ちゃんと同じ年齢になった時、小さな子に対して同じようなことができるようになるのだろうか。なるかな…なるといいな…
かつて小さかった子がお兄ちゃんという立場になって、おそらく昔の自分が同じ思いをした経験をもとに、小さな子に優しさと思いやりを与えられる…これはすごいことです。
それから、あの思いやりに満ちたお兄ちゃんを育てられた親御さんも、ありがとうございました。