かわいいむすこはずるい。

2016年春に息子が生まれました。

息子がヒトになってゆく

保育園主催の親子遠足の帰り道、駅で息子と同じくらいの年頃の親子がエレベーターを待っていた。小さな女の子は息子に気がつき、隣のお母さんの服の裾をひっぱって「ねぇ、息子くん、いるよ」と言った。同じクラスの子だったのだ。

息子のお友達から、息子の名前を呼ばれた。ちょっと衝撃だった。

そういえば息子を産んだ産院で、一ヶ月検診を受けた際にも同じ衝撃があったのを思い出した。受付で息子の名前が呼ばれ「あっ」と思ったのだ。

ついこの間まで私のお腹の中にいた生物は、私と一心同体で送った十月十日の末に、ほにゃほにゃっとした個体として排出され、親が名前を与えてやると、いっちょまえの個人として他人から名前を呼ばれたのだ。不思議な気分だった。

健康保険証が交付された時は印字された息子の名前をまじまじと眺め、記念に写真を撮っておいた。息子をベビーカーに乗せてカフェに入り、店員さんに「お二人様ですね?」と言われると「まさか・・・お前・・・こいつが見えるのか?」みたいな気持ちになった。

人間としてカウントされ得る、個人なのか、息子は。

正直なところ生まれてから1年間ほどは「ナニカ」だった。無から現れた、新しい不完全な生命体。それが1歳8ヶ月現在では、身体的にも能力的にも、社会的にもヒトになり始めている。私は知らない、保育園という息子の社会の中で、同級生から一人の人間として認められ、個人の名前を呼ばれた。

でもな、その同級生かてついこないだ生まれたばっかりやんか?な?

もー、わかった。君ら、もう赤ちゃんじゃないねやろ。赤ちゃん、卒業やな?そういうの、ちょっとやめてもらえる?急にいっちょ前になっていくの、なぁ。おっきなるのはうれしぃけどやなぁ。ほんまなぁ、おばちゃんもー、若い子についていかれへんわぁ。