かわいいむすこはずるい。

2016年春に息子が生まれました。

次は30年越しの約束を果たしたい

正直なところを告白すると、息子のことが可愛くて仕方ないだとか、目に入れても痛くないだとか、そういう風に感じてこれまで息子と関わってこられたわけではない。義務感、責任感。子ども本人に対しても、社会に対しても、良い親でなければいけない、世の中の規範を守る、真っ当な大人として、自分のできる限りのことを努力と根性でのらりくらりとやってきただけなのだった。


こんなふうな、あまり大っぴらに言いづらいマインドで、なんとか息子と日々を真っ当っぽい親としてやっていこうとする中で、まがりなりにも自分自身で定めたポリシーがいくつかある。


1.子どもだからと誤魔化したり嘘はつかない、都合が悪い事実も説明する


2.私が間違えたり失敗したらきちんと素直に謝る


3.息子と約束したことは守る


これらはまさに私が自分の親にされて嫌だったことで、大人になった今でも、あらゆる人間関係の中で、されたくないことリストなのだった。


これはほぼ怨念なのだけど、30年前、初めて父と母と妹でスキー場へ行った。楽しくて楽しくて楽しくて、本当に楽しかった。めったに雪が積もることのない地域出身なので、スキー場の、あれだけたくさんの雪はテレビの中でしか見たことがなく、本当に本当に楽しかった。帰りの車の中で「また行きたい、絶対に絶対にまた来ようね」と何度も何度もお父さんとお母さんにお願いした。「うん、いいよ」と約束してくれた。


しかし翌年も、翌々年も、それから何年経っても再び家族でスキー場に行くことはなかった。何度せがんでも、また今度ね、またいつかね、という答えだった。行けないなら行けないと事情を説明してもらえれば諦められたのに、言われなかったから諦められないのだった。


こうして「またお父さんとお母さんと妹も雪遊びがしたい」という想いを抱えたまま、36歳になった。ちなみに登場人物全員、現時点で超健在。


時は過ぎ、昨年の冬は暖冬で、京都は全く積もらなかった。保育園に送る自転車の後ろで、息子は毎朝「いつになったらゆきがふるの?たくさんのゆきであそびたい」と言った。


天候はわからぬ。寒波や降雪は母の力ではどうにもならぬ。幼い我が子に雪を見せてやりたい、思う存分に遊ばせてやりない気持ちはあるし、なんなら私も雪遊びがしたい。30年前から燻っている、果たされない約束を抱えたままの私がいた。

 


そうしてついに父にLINEをした。

「定年退職お疲れ様でした。今年の冬、琵琶湖バレイに一緒に行ってくれませんか?私と息子とみんなで雪遊びをしましょう。」